福井大学大学院福井大学・奈良女子大学・岐阜聖徳学園大学連合教職開発研究科では、「教育の内部質保証に関する基本方針」に基づき、教員の養成に係る教育の質の向上のため、次のような取組を行っています(教育職員免許法施行規則第22条の6第6号関係)。

1.教育の質保証及び向上に係る体制等の整備

教育研究活動の質や学習成果等を継続的に保証し、その改善・向上を図るため、全学的な教学ガバナンスの下、全学教育改革推進機構及び教育内部質保証委員会が設置されています。

これら全学組織と連携し、連合教職開発研究科では、教育研究上の目的や三つのポリシーに則し、教育研究活動の取組状況、学習成果等について定期的に自己点検・評価を実施し、教育の質保証及び向上に向けたPDCAサイクルを稼働させています。

2.三つのポリシーの継続的な見直し

本学の第3期中期計画において、グローバル化社会において求められる高度専門職業人等の人材の育成が学位プログラムとして担保されるよう、体系的で国際通用性を有する教育課程や個々の科目の目標等を整備し、周知・運用することを目標として定めました。
これを踏まえて、連合教職開発研究科では、一体的に策定したアドミッション・ポリシー、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーについて、整合性等を継続的に見直し、現在の学校を取り巻く諸課題に対応するよう適切な改訂を行っています。

連合教職開発研究科は、学校改革マネジメントコース、ミドルリーダー養成コース、授業研究・教職専門性開発コースの3つの設定コースに応じたディプロマ・ポリシーをそれぞれ策定しており、同方針に基づいた教育課程の編成と実施方針、授業科目の内容の策定、授業形態と学習指導法の設定、履修指導と支援の推進、成績評価の実施、修了判定の標準化等を遂行しています。
2020年度、大学院教育学研究科修士課程の連合教職開発研究科への統合・一元化に伴い、全ての教職のキャリア形成に対応したディプロマ・ポリシーへの改訂を行いました。

3.学校拠点方式に基づく教育課程の編成及び検証

【学校拠点方式に基づく教育課程の特徴】
連合教職開発研究科の教師教育・教員養成の特徴である「学校拠点方式」は、幼小中、特別支援学校等の学校現場(拠点校、連携校)を学びの場とし、学校、教職大学院、教育委員会の連携による協働システムであり、「学校拠点方式」に基づく教育課程の編成には、主に以下の5つの特徴があります。

学校を拠点とした授業

学校を拠点に行われる長期インターンシップ、ミドルリーダー実習、学校改革マネジメント実習、学校拠点長期協働実践研究プロジェクトを教育課程の核に位置付け、学校が抱える今日的課題に即した協働研究を推進し、学校改革・カリキュラム改革・授業改革に取り組みながら教師の協働実践力を培っていきます。その対象は、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校・教育行政機関と幅広く、大学院教員が学校等に出向き、協働研究を推進しています。

実践省察カンファレンス・事例研究を中心にした科目編成

学校の年間リズムに応じながら、学習活動、特別活動、校内研修等の教育実践の実際と、そこから生成される実践課題と実践理論について、院生間及び教員との協働省察カンファレンス・事例研究を中心に学ぶことができるカリキュラムを編成しています。

1年間の学校における実習

学校の1年間のサイクルに沿って長期実習を行っています。長期の実践省察に基づく学修により、「実践力」「マネジメント力」「省察・研究能力」「理念と責任」という4軸の教職専門性が開発され、特に省察的実践の習慣化を成し遂げていきます。
さらに、学校の中核教員とそれを共に担う若い世代が交流するサイクルを新たに創り出し、学校を学び合う協働組織へと創造していく力量を高めます。

複数の大学教員のチームによる授業

多様な専門分野の教員と実践経験豊かな実務家教員により、学修支援・学校実践支援チームを構成し、学校での支援やカンファレンス等の全ての授業を複数の教員で協働して行っています。分担ではなく協働の教育活動であり、それぞれが専門性を発揮しながら実践研究を行っていくことで、理論と実践の絶え間ない融合が実現されています。

全国の教員養成系大学・大学院等との交流

年2回、公開での実践研究交流集会を開催し、全国の教師教育・教員養成系大学及び機関等との実践交流ネットワークの中で、各自の実践研究を深めていきます。

【教育課程の編成】
大学院生と大学教員が協働して学校が抱える課題に取り組む「学校における実習」科目と各系の「協働実践研究プロジェクト」を教育課程の中核に据え、以下の(1)から(3)の3つのアプローチにより科目を編成しています。
 (1)実践と研究を媒介する実践・省察・記録化の事例研究サイクルと「長期実践研究報告」の作成
 (2)実践と実践、実践と研究を交流する実践研究交流集会
 (3)実践の中からの理論化を目指す実践研究の方法論と架橋理論

また、教育課程は、上記の3つのアプローチに加え、連合教職開発研究科の目指す以下の(A)から(D)の教職専門性開発の4つの軸に即して構造化されています。
 (A)学習と成長を支えるファシリテーター・コーディネーターとしての実践力
 (B)学習の協働組織とその改革のマネジメント力
 (C)実践の質を不断に高め発展させていく省察・研究能力
 (D)公教育としての学校を担う専門職としての教員の理念と責任

カリキュラムの中核となる「協働実践研究プロジェクト」と「学校における実習」は、(A)学習と成長を支えるファシリテーター・コーディネーターとしての実践力に関わるものであり、これを支えるのが、(B)、(C)、(D)の力を培うことをねらいとする科目群です。
「協働実践研究プロジェクト」は、拠点校において学校の課題と現実に即して進められ、学校での授業づくりや児童生徒の成長発達支援の展開に関する実践演習・事例研究を実施しています。
(B)学習の協働組織とその改革のマネジメント力に即したマネジメントに関わる科目群は、「学習コミュニティマネジメント実践事例研究」等の科目です。
(C)実践の質を不断に高め発展させていく省察・研究能力に即した実践の省察と理論化に関わる科目群は、各系の実践研究・事例研究の選択科目や「長期実践報告の作成と発表」となります。
(D)公教育としての学校を担う専門職としての教員の理念と責任に即した公教育と教師の役割、理念と責任に関わる科目群は「公教育改革の課題と実践」、「学校と社会」等です。

教育の質のさらなる向上を図るため、教育課程の再編を実施しており、2020年度には、大学院教育学研究科修士課程の連合教職開発研究科への統合・一元化に伴い、授業研究・教職専門性開発コース及びミドルリーダー養成コースにおいてカリキュラムの再編を行っています。
具体的には、コース別選択科目において、これまで3つの系(「カリキュラムと授業」「子どもの成長発達支援」「コミュニティとしての学校」)を配置していたところに、新たに、授業における教科内容・教材開発研究を重視する4つ目の系(「カリキュラム開発研究」)を設置し、当該コースのカリキュラムの高度化を図っています。
新たに設置した第4系は授業研究・教職専門性開発コースにおける授業研究専門性開発アプローチとして展開しています。

【教育課程の検証】
連合教職開発研究科の教育課程は、毎週開催される連合教職開発研究科教務・カリキュラムマネジメント委員会において、恒常的にその質の点検、改善について検討を行っています。
また、毎週開催されるファカルティ・ディベロップメント(Faculty Development、FD)研究会においても、参加する全教員で日常の大学院生の学修過程を共有し、大学院生の個別の学修状況に応じた教育の提供を行っています。
さらに、福井県教育委員会、福井県教育総合研究所、市町の教育委員会担当者、拠点校・連携校の管理職等が参加する「連合教職開発研究科運営協議会及び教育課程連携協議会」(年2回開催)において、教育課程の編成等について協議を行い、教育の質のさらなる向上を図っています。

4.ファカルティ・ディベロップメントの取組

毎週、FD研究会を開催しており、毎回異なる小グループによるメンバーにより、学校における実践研究の展開や、研究論文の検討と報告を行い、メンバー相互の教育研究活動について検討・評価を実施しています。本研究会での検討を経て、メンバー各自がまとめた実践研究論文を、年末に教育研究報告年報『教師教育研究』として発行しています。
また、教育学部及び大学院福井大学・奈良女子大学・岐阜聖徳学園大学連合教職開発研究科FD委員会の主導により、教育内容及び授業方法の改善を図るため、FD活動を組織的に実施しています。
教員同士の専門性を生かした取組の共有・ピアレビューの機会を設け、大学教育、教員養成に係る諸課題に対応する多様なテーマについて定期的にFD研修会を実施し、教育の質のさらなる向上を図っています。