学校紹介
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校長あいさつ
壁画「平和の楽園」に込められたもの
福井大学教育学部附属特別支援学校
校長 岩井 秀夫
福井市街地の北西部、八ツ島地区の田園風景の中に、大きな壁画があります。虹色の画家、 ay-o（靉嘔）氏がデザインした「平和の楽園」の壁画です。
この大壁画のある学校が、本校、福井大学教育学部附属特別支援学校です。
開校から４年後の昭和50年(1975年)３月に完成したこの壁画は、初代副校長であった木水奥右衛門氏らの尽力により設置されたものです。「なぜ、特別支援学校に壁画なのか」と不思議に思われるでしょう。
本校は、昭和46年（1971年）に福井大学教育学部附属養護学校として全国で１３番目に認可され、そこに木水氏が初代副校長として赴任することになります。美術の専門家であった木水氏は、障がい児教育は素人であったのですが、素人であったからこそ、障がい児に対する教育論や方法論ではなく、目の前にいる子どもたちの気がかりから始めるやり方で実践研究を進めていきました。障がい者も健常者も教育に違いはないということから、子どもたちを生き生きとさせる教育、子どもを中心にした教育を目指していました。このような考えの根本には、木水自身に「学校は芸術的でなければならない」という発想があったと言います。それがこの「平和の楽園」の壁画に結実したということでしょう。
壁画の中央から左側には、弱々しい鳥を口にくわえた猫が、強い意志を感じさせる視線を前方に向けています。中央には大きな木が空に向かって伸びていて、その右側には野牛やライオン、人に導かれたトラなどが力強く描かれています。下に目を向けると、二人の人間が、眠そうな目をしたヒョウの前で何かしているようです。他にもたくさんの動物たちがまるで隠し絵のように描かれています。いろいろな動物たちや人間が、自然豊かな空間に共生する虹色の平和の楽園。小鳥をくわえた猫に、自然の厳しさを感じる人もいれば、疲れ果てた弱者を救う優しさを感じる人もいる。観る人にいろいろな物語を喚起させる構図です。この壁画に込められたメッセージは、これらのような絵の対象やその構図だけではありません。
先日（2023.5.22）、「この壁画を見たい」という人がアメリカからやってきました。アメリカのスミソニアン博物館の学芸員のキットブルックスさんです。スミソニアン博物館と言えば、月の石や世界初の飛行機の展示でも知られる世界的博物館ですが、キットブルックスさんは、その19もある施設群の中の国立アジア美術館で仕事をされています。この訪問は、本校の壁画を描いたay-o氏の図録出版記念の催しが東京で開かれ、そこに招かれたay-o氏の研究をするキットブルックスさんが ay-o氏作の大壁画を見てみたいということで、わざわざ福井に立ち寄り、本校を訪ねたという訳です。そのときのお話。
この「平和の楽園」の原画は、ナイーブアート（フォークアート）※と呼ばれる作品をベースにしているそうです。キットブルックスさんも、「フォークアートというのは、名もない画家がコミュニティーの中で地域の人たちの支援を受けて育てられ、そのお礼に支援者の肖像画を贈ったというほど、地域との密接なかかわりの中から生まれてきたアートです」と話していました。
人と人、地域と人との関わりやその温もりを大切にしてきたナイーブアート（フォークアート）。これが、この壁画に込められたもう一つのメッセージではないでしょうか。
「明るく、自由で、みんな仲良く、励まし助け合って、力イッパイ、楽しく生きていこうという、雰囲気の中での教育を実践していきたい」
本校が、昭和54年(1979年)に著した「壁画のある学校」にある言葉です。設立から50年を経た現在でも、本校の教育に脈々と受け継がれてきている精神でもあります。
社会や教育が大きな転換期を迎えている現在、特別支援教育の目指すべき方向としてインクルーシブ教育が示されていますが、「平和の楽園」が象徴するものは、インクルーシブ教育が導こうとしている共生社会に重なるものではないでしょうか。本校は、その意味を繰り返し自らに問い続けながら、子どもたちを中心にした教育を進めていきたいと思います。
※ ナイーブアートとは、一般には、画家を職業としない者が、正式な美術教育を受けぬまま、絵画を制作しているケースを意味する（ウィキペディアより）
[参考文献]「壁画のある学校」福井大学教育学部附属特別支援学校（1979）
「木水育男の自由で生き生きとした学校づくりの実践–設立当初の福井大学附属養護学校での取り組み」朝倉 俊輔 福井大学教育実践研究 = Fukui educational research / センター研究紀要編集委員会 編 (32) 45-55, 2007
壁画
本校のシンボル ： 大壁画 「平和の楽園」 靉嘔 作
スクールプラン
校歌
